画面解像度と視聴距離

対角線長と画素数、そして距離を設定してください。注目すべきは「有効な列数」です。パネルの性能がどれほど高くても、その席から眼が受け取れる細部の量には限界があります。その上限を示すのがこの数値です。

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視力20/20のとき、利用できる列数は「分」で表した視野角と等しい

55インチの16:9パネルは幅1.22 mです。2.5 mの距離から見ると視野角は27.4°となり、27.4°は1,642分に相当します。これを眼が受け取れる上限と捉えてください。スネレン視力表における20/20の定義は「一分間隔の細部を識別できる眼」ですから、その席に対して画面が提供できる識別可能な列数は1,642列ということになります。パネル自体には3,840列あります。残りの2,198列もガラス上で確かに光を放っていますが、それを受け取る余裕はすでに眼には残されていません。この上限が1,920列を超えるのは2.12 mの距離です。それより近い席であれば、4Kパネルは1080pでは描けない世界を見せてくれます。しかしそれより離れれば、二つの画面は全く同じ映像でしかありません。

458 ppiのスマートフォンは、80 ppiのテレビよりも画素が粗く見える

読書距離のスマホを押してみてください。1,170列を持つ6.1インチ画面の画素密度は458 ppiであり、30 cmの距離では一画素の視角が0.64分になります。次に居間、4Kを押します。こちらは80 ppiで、一画素の視角は0.44です。テレビのほうが八倍以上遠くに置かれているため、スマートフォンの画素はガラス上での密度が5.7倍であるにもかかわらず、見た目の粗さは1.46倍になります。密度は工場で決まる絶対的な事実です。一方、角度は視聴者の眼に関する事実であり、自分が動いたときに変化するのは角度だけなのです。

全ての列を活用しつつ、網目も見えないという席は存在しない

あの55インチ4Kパネルにおいて、3,840列すべてが眼に届くのは0.97 mより近づいたときだけであり、画素の網目が見えなくなるのは1.09 mより離れたときです。この二つの条件が重なることは決してありません。そしてそれは、この画面に限った話ではないのです。画面全体の視角は2·arctan(W/2d)となりますが、N個ある各画素の視角はそれぞれ2·arctan(p/2d)となります。arctan関数は上に凸であるため、部分をN倍したものは常に全体よりも大きくなります。つまり、N・画素の視角 > 視野角、という関係が成り立ちます。対角線長がいくつであっても、解像度がどれほど高くても、そして視力がどうであれ、最後の列が眼に届く距離は、網目が消える距離よりも必ず近くなるという数学的な事実があるのです。

全プロセスの詳細解説

  1. 壁から3.0 mの55インチと65インチの4Kテレビ 8 ステップ

    壁から3.0 m離れた場所にソファがあります。店頭には55インチの4Kテレビと65インチの4Kテレビが並んでいます。どちらかを選べば、1080pを上回る細部が得られるでしょうか。もし無理なら、どうすればよいのでしょうか?

    1. まずは幅を求めます。対角線長は箱に書かれている数字ですが、角度を決めるのは幅だからです。16:9の場合、対角線は√(16² + 9²) = 18.3576となり、そのうち16の割合が幅になります。

      W=55′′×16162+92=47.94′′=1217.6 mmW = 55'' \times \frac{16}{\sqrt{16^2 + 9^2}} = 47.94'' = 1217.6\ \mathrm{mm}
    2. 次に、その幅がソファから見てどれだけの角度を占めるかを計算します。画面を中央で二等分して考えましょう。3000 mmの距離から見る、608.8 mmという半分の幅です。

      θ=2arctan⁡ ⁣608.83000=22.94∘=1376.6′\theta = 2\arctan\!\frac{608.8}{3000} = 22.94^\circ = 1376.6'
    3. これを最小分離角で割ります。20/20の視力は一分間隔の細部を識別できるため、20/20においては分の数値がそのまま列数になり、単位を変換するための計算は一切不要です。

      N=1376.6′1.0′=1377N = \frac{1376.6'}{1.0'} = 1377
    4. 1,377列。1080pは1,920列、4Kは3,840列を供給するため、そのソファから見る55インチのテレビは1080pパネルにも劣る細部しか届けてくれません。4Kという肩書きには何の価値もないことになります。では、65インチを試してみましょう。

      65′′⇒W=1439.0 mm,  θ=26.97∘⇒N=161865'' \Rightarrow W = 1439.0\ \mathrm{mm}, \; \theta = 26.97^\circ \Rightarrow N = 1618
    5. これでもまだ302列足りません。そこで逆算し、列数が1,920になるのはどれほどの幅なのかを考えます。一分の視角で計算するとこれは1,920分、すなわち32°に相当するため、中央から左右にそれぞれ16°となります。

      N=1920⇒θ=32∘⇒W=2(3000)tan⁡16∘=1720 mmN = 1920 \Rightarrow \theta = 32^\circ \Rightarrow W = 2(3000)\tan 16^\circ = 1720\ \mathrm{mm}
    6. この幅を、箱に書かれている対角線長の数値へと戻します。

      D=1720×162+9216=1974 mm=77.7′′D = 1720 \times \frac{\sqrt{16^2 + 9^2}}{16} = 1974\ \mathrm{mm} = 77.7''
    7. ツールで対角線長を78、距離を3.0に設定すると、1,927列という数値が出ます。つまり3.0 mの距離からなら、78インチあたりでようやく1080pがその真価を発揮し始めるということです。4Kとなれば64°の視野角が求められます。これは幅3.74 mの169インチパネルであり、大半の家では壁そのものより広くなってしまう寸法です。

      N=3840⇒θ=64∘⇒W=2(3000)tan⁡32∘=3749 mm  (D=169′′)N = 3840 \Rightarrow \theta = 64^\circ \Rightarrow W = 2(3000)\tan 32^\circ = 3749\ \mathrm{mm} \;(D = 169'')
    8. 一つ注意点がありますが、これはここまで述べてきたこととは逆の方向に働くものです。この1,377列というのは22.9°全体に広がる上限値ですが、人間の眼は22.9°の範囲すべてで20/20の視力を維持できるわけではありません。最高の解像力が発揮されるのは中心窩(ちゅうしんか)であり、それがカバーするのは中央の約二度に限られます。

      2∘×60=1202^\circ \times 60 = 120

    解答

    どちらでもありません。3.0 mの距離では55インチが1,377列、65インチが1,618列であり、どちらも1080pが持つ1,920列を下回ります。1080pを導入する価値が生まれるのは約78インチからで、4Kの価値が出るのは169インチからです。さらに言えば、1,377という数字すら寛大にすぎる見積もりです。二度は120分であるため、ある瞬間に完全な鮮明さで識別できているのは120列ほどにすぎず、残りは眼球運動によって補完してつなぎ合わせているにすぎません。この補正はこのページでの計算の範囲を超えていますが、画素の上限値が頭打ちになった後でも、同じ距離から見る大きな画面が依然としてより豊かに感じられる理由はここにあります。

  2. 8Kパネルと、ソファに届く1,642列 7 ステップ

    2.5 m離れた場所から見る55インチの8Kテレビ。その3300万画素のうち、細部として実際に眼へ届くのは何画素なのかを求めてください。そのうえで、残りの画素がシリコンの代価に見合うようになるには何が変わればよいのかを考えましょう。

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    1. 角度を決めるのは対角線長ではなく幅です。

      W=55′′×16162+92=47.94′′=1217.6 mmW = 55'' \times \frac{16}{\sqrt{16^{2} + 9^{2}}} = 47.94'' = 1217.6\ \mathrm{mm}
    2. その幅の半分を2.5 mの距離から見ると27.4°になり、最小分離角が一分であれば、この角度はそのまま列数へと読み替えられます。

      θ=2arctan⁡ ⁣608.82500=27.4∘=1,642′\theta = 2\arctan\!\frac{608.8}{2500} = 27.4^\circ = 1{,}642'
    3. ソファに届くのは1,642列です。ガラスの上には7,680列あります。前者を表示するのがこのツールのカードで、後者を刷っていたのが箱でした。

      N=1,642′1.0′=1,642of7,680N = \frac{1{,}642'}{1.0'} = 1{,}642 \quad\mathrm{of}\quad 7{,}680
    4. 列は一方向の話にすぎません。眼が使える行数も同じ比率で決まるため、実際に届く映像は1,642×924、すなわち1.52メガピクセルとなります。

      1,642×916=924,1,642×924=1,517,208=1.52 Mpx1{,}642 \times \tfrac{9}{16} = 924, \qquad 1{,}642 \times 924 = 1{,}517{,}208 = 1.52\ \mathrm{Mpx}
    5. パネルの33.18メガピクセルに対して4.6%です。同じ席から見る同じ画面の4K版も、まったく同じ1,642列、まったく同じ1.52メガピクセルを届けます。こちらは自身の画素数の18.3%にあたります。画素は四倍、しかし増えた分は一つも届いていません。

      1.5233.18=4.6%,1.528.29=18.3%\frac{1.52}{33.18} = 4.6\%, \qquad \frac{1.52}{8.29} = 18.3\%
    6. 変わらなければならないのは角度であり、角度だけです。7,680列すべてを使うには7,680分の視野角、つまり128°が必要で、それは55インチの画面から297 mmの位置に座ることを意味します。

      7,680′=128∘  ⟹  d=608.8tan⁡64∘=608.82.050=297 mm7{,}680' = 128^\circ \;\Longrightarrow\; d = \frac{608.8}{\tan 64^\circ} = \frac{608.8}{2.050} = 297\ \mathrm{mm}
    7. あるいは席をそのままにして、画面を幅10.25 m、対角線長にして463インチまで大きくすることです。

      W=2(2500)tan⁡64∘=10,251 mm  ⟹  D=463′′W = 2(2500)\tan 64^\circ = 10{,}251\ \mathrm{mm} \;\Longrightarrow\; D = 463''

    解答

    パネルが持つ33.18メガピクセルのうち1.52メガピクセル、割合にして4.6%です。逃げ道は二つありますが、どちらもテレビとは呼べません。画面から0.30 mの距離に座るか、463インチの画面を用意するかです。上限を決めているのは角度ですから、高い画素数を活かせるのは近くで見る画面ということになります。「27インチモニター」プリセットを試してみてください。0.6 mの距離にある27インチでは、眼の側の上限が3,177列あるのに対し、パネルが供給できるのは2,560列です。ここで扱った中で、パネルのほうが先に尽きる唯一の例です。

    Nusable=2arctan⁡ ⁣(W/2d)aN_{\mathrm{usable}} = \frac{2\arctan\!\left(W/2d\right)}{a}