ダイオードと0.7 Vの近似

電源電圧、抵抗値、温度を設定すると、ダイオードの動作点が求まります。よく使われる0.7 Vを初期値に、ニュートン法で解に近づく過程をたどり、近似との差を確かめましょう。

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レッスン

理論 — ダイオードと0.7 Vの近似

ダイオードは、一方の向きには電流を通しやすく、逆向きにはほとんど通さない接合です。通常の動作範囲では、電流は電圧の指数関数で表されます。これがショックレーの式です:I = IS(eV/(nVT) − 1)。ここでVT = kT/qは熱電圧で、25 °Cでは25.69 mVです。回路に組み込んだダイオードの電圧は、あらかじめ決まっているわけではありません。ダイオードの特性曲線と、回路の残りの部分が許す電圧と電流の関係を表す直線との交点で決まります。

各記号の意味

V_T
熱電圧kT/q。単位はV。25 °Cでは25.69 mVで、絶対温度に比例する
I_S
飽和電流。単位はA。このページの初期設定では10⁻¹⁴ Aというごく小さな値。電流が大きくなる電圧の位置を決め、温度とともに急激に増加する
n
理想係数。1から2の値をとり、電圧の刻みをn倍する。n = 2では、電流を10倍にするのに必要な電圧差も倍になる
E_g
シリコンのバンドギャップ。このモデルでは1.11 eV。I_Sの温度による増加の速さを決め、Vがその値をどれだけ下回るかによって電圧の温度係数が変わる理由となる
前提
理想的なショックレーの式だけを使います。実際のダイオードでは大電流で曲線の形を変える内部抵抗を考慮せず、逆方向降伏も扱いません。定常状態の直流を仮定します。飽和電流とnはモデル用の設定で、特定の製品の仕様ではありません。飽和電流の温度変化は、バンドギャップ1.11 eV、指数3のSPICEダイオードモデルに従います。このページの温度係数も、そのモデルに基づく値です。

ダイオードに「導通が始まる電圧」はない

最初のグラフの上にある対数を押してください。ピコアンペアからアンペアまで、曲線が直線になります。電圧が59.16 mV上がるごとに、電流は10倍です。0.7 Vで特別な変化は起きません。このダイオードには、0.4 Vで58 nA、0.5 Vで2.83 µA、0.6 Vで0.139 mAが流れます。次に100 µA、1 mA、10 mA、100 mAを順に押し、ひし形の位置を追ってみましょう。ひし形は、曲線が軸の高さの1/10に達する点を示しています。その電圧は0.532、0.592、0.651、0.710 V。ダイオードも式も同じです。目印の高さの割合を変えると、四つの値は変わりますが、軸の上限を10倍にするごとの電圧差は59 mVのままです。このダイオードで「0.7 V」が折れ曲がり点に見えるのは、電流軸の上限を68 mAにしたグラフです。

−2 mV/Kは、ある電流での値

電流を一定に保ってダイオードを温めると、電圧は下がります。電流がISより十分大きい領域では、モデル式を微分して得られる温度係数は(V − Eg − 3VT)/Tです。同じダイオードでも、動作点によって変わります。最後の表では、25 °Cでの値を各行について計算しています。1 µAでは−2.39 mV/K、100 µAでは−2.00、10 mAでは−1.60、100 mAでは−1.40です。電流が10倍になるごとに、温度係数の絶対値は0.198 mV/Kずつ小さくなります。よく使われる−2 mV/Kが当てはまるのは、ダイオード電圧が0.591 Vのとき。このページでは、電流がおよそ0.1 mAの場合です。5 V、75 °Cを押してください。5 Vの回路のダイオード電圧は、温度差50 Kで84 mV下がります。平均すると1.68 mV/Kです。

0.7 V近似で十分なとき

ダイオードと抵抗を直列につなぎ、ダイオード電圧を0.7 Vとみなすと、電流の相対誤差は厳密に(V − 0.7)/(VS − V)となります。分子は、実際のダイオード電圧と0.7 Vとの差。分母は抵抗の両端電圧で、回路の設計で調整できる量です。1 kΩなら、電源電圧が2 Vから30 Vの範囲では誤差は最大でも3.11%、3 Vでは1.18%です。1 Vでは19.89%小さく見積もり、0.7 Vでは電流が流れないと予測しますが、実際には0.1067 mAが流れます。抵抗値を変えると、分子も変わります。このダイオードの電圧がちょうど0.7 Vになるのは、電流が6.80 mAのときだけです。100 kΩではダイオード電圧は約0.54 Vとなり、電源電圧2 Vでの誤差は10.83%。100 Ω、5 Vではダイオード電圧が0.747 Vとなり、近似は電流を1.11%大きく見積もります。

全プロセスの詳細解説

  1. 二つの電流から温度を求める 6 ステップ

    ダイオードに10 µAを流し、次に100 µAを流します。測定した電圧は、それぞれ0.477278 Vと0.541398 Vでした。ダイオードについて分かっているのはn = 1だけです。温度は何度でしょうか。

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    1. 片方の電圧だけでは温度は求められません。未知の飽和電流にも依存するからです。このモデルでは、飽和電流は50 °Cで25 °Cのときの36倍になります。

      IS(323.15 K)IS(298.15 K)=(323.15298.15)3eEgk(1298.15−1323.15)=36\dfrac{I_S(323{.}15\ \mathrm{K})}{I_S(298{.}15\ \mathrm{K})}=\Bigl(\dfrac{323{.}15}{298{.}15}\Bigr)^{3}e^{\frac{E_g}{k}\left(\frac{1}{298{.}15}-\frac{1}{323{.}15}\right)}=36
    2. そこで、測定値の差をとります。それぞれの電圧はnVT ln(I/IS)なので、差はnVT ln(I2/I1)となり、飽和電流が消えます。どちらの電流も飽和電流より十分大きいことが条件です。

      V=nVTln⁡IIS⇒V2−V1=nVTln⁡I2I1V=nV_T\ln\dfrac{I}{I_S}\quad\Rightarrow\quad V_2-V_1=nV_T\ln\dfrac{I_2}{I_1}
    3. 電圧差は64.120 mV、電流比は10なので、VT = 64.120 mV ÷ ln 10 = 27.847 mVです。

      0.541398−0.477278=0.064120 V,VT=0.064120ln⁡10=0.027847 V0{.}541398-0{.}477278=0{.}064120\ \mathrm{V},\qquad V_T=\dfrac{0{.}064120}{\ln 10}=0{.}027847\ \mathrm{V}
    4. VT = kT/qより、温度はT = qVT/k = 323.15 K、つまり50.0 °Cです。

      T=qVTk=1.602176634×10−19⋅0.0278471.380649×10−23=323.15 KT=\dfrac{qV_T}{k}=\dfrac{1{.}602176634\times10^{-19}\cdot0{.}027847}{1{.}380649\times10^{-23}}=323{.}15\ \mathrm{K}
    5. ページで確かめてみましょう。温度を50 °Cにすると、電流を10倍にする電圧差は64.12 mVになります。最後の表の10 µAと100 µAの行には、0.4773と0.5414が表示されます。

      0.5414−0.4773=0.0641 V0{.}5414-0{.}4773=0{.}0641\ \mathrm{V}
    6. この電圧差は、温度が1 K上がっても0.198 mVしか増えません。それぞれの電圧の変化の約1/10です。差を0.1 mVの精度で測れれば、温度は約0.5 Kの精度で求まります。ここで測定値をマイクロボルトの桁まで示したのは、そのためです。

      d(V2−V1)dT=kln⁡10q=0.198 mV/K\dfrac{d(V_2-V_1)}{dT}=\dfrac{k\ln 10}{q}=0{.}198\ \mathrm{mV/K}

    解答

    二度の測定とnだけから、T = 323.15 K、すなわち50.0 °Cと求まりました。どちらの電流も飽和電流より十分大きければ、接合電圧の差は飽和電流の値によらず絶対温度に比例します。この性質を使うと、シリコンチップは電流比だけを校正して、自身の温度を測れます。

    T=323.15 K=50.0 ∘CT=323{.}15\ \mathrm{K}=50{.}0\ ^\circ\mathrm{C}

学習の道すじ

抵抗器ではないもの