三角関数の恒等式の証明

示したい等式を「左辺 ≡ 右辺」の形で入力し、式変形を一行ずつ続けてください。各行には、直前の行と等しい式を書きます。一周にわたる64個の角で比較し、両方の式が定義されるすべての角で値が一致すれば✓を表示します。値が異なる場合は×と、最初に見つかった角度を表示。入力した等式が定義される角で途中の式が定義されなくなると、警告が出ます。関数や累乗、根号は入力キーで挿入できます。

正弦と余弦で表す tan⁡x=sin⁡xcos⁡xsec⁡x=1cos⁡x,csc⁡x=1sin⁡x\begin{gathered}\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}\\\sec x=\frac{1}{\cos x},\quad\csc x=\frac{1}{\sin x}\end{gathered}
正弦と余弦の二乗 sin⁡2x+cos⁡2x=11+tan⁡2x=sec⁡2x\begin{gathered}\sin^{2}x+\cos^{2}x=1\\ 1+\tan^{2}x=\sec^{2}x\end{gathered}
分母にある 1 ± sin x (1−sin⁡x)(1+sin⁡x)=cos⁡2x(1-\sin x)(1+\sin x)=\cos^{2}x
二乗の差 a2−b2=(a−b)(a+b)a^{2}-b^{2}=(a-b)(a+b)
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レッスン

理論 — 三角関数の恒等式の証明

恒等式を証明するとは、一方の辺を等しい式へと順に変形してもう一方の辺に導き、両辺が定義されるすべての角で等しいことを示すことです。

公式の導き方

  1. 複雑なほうの辺から始めましょう。項や分数が多い辺、角の和や倍角を含む辺は、式を整理する手がかりも豊富です。
    tan⁡x+cot⁡x=⋯=sec⁡xcsc⁡x\tan x+\cot x=\cdots=\sec x\csc x
  2. tan、sec、csc、cotが混在していたら、sinとcosで表しましょう。tan x = sin x/cos xや、逆数の関係を使います。
    tan⁡x=sin⁡xcos⁡x,cot⁡x=cos⁡xsin⁡x,sec⁡x=1cos⁡x,csc⁡x=1sin⁡x\tan x=\frac{\sin x}{\cos x},\quad\cot x=\frac{\cos x}{\sin x},\quad\sec x=\frac{1}{\cos x},\quad\csc x=\frac{1}{\sin x}
  3. すでに学んだ式の計算を使いましょう。通分や平方の差の因数分解が役立ちます。1 + sin xに対して1 − sin xを掛ければ、1 − sin²xを作れます。
    a2−b2=(a−b)(a+b),(1+sin⁡x)(1−sin⁡x)=1−sin⁡2xa^{2}-b^{2}=(a-b)(a+b),\qquad(1+\sin x)(1-\sin x)=1-\sin^{2}x
  4. 使える恒等式で置き換えましょう。sin²x + cos²x = 1、1 + tan²x = sec²xのほか、加法定理や倍角の公式も使えます。
    sin⁡2x+cos⁡2x=1,1+tan⁡2x=sec⁡2x,1+cot⁡2x=csc⁡2x\sin^{2}x+\cos^{2}x=1,\qquad1+\tan^{2}x=\sec^{2}x,\qquad1+\cot^{2}x=\csc^{2}x
  5. もう一方の辺と同じ形まで変形して終えましょう。前後の式がともに定義される範囲で各行が等しく、入力した等式が定義される角で途中の式もすべて定義されていれば、最初の行と最後の行は等しいといえます。示したい等式の両辺を二乗してはいけません。二乗すると符号の情報が失われ、誤った等式から正しい等式が得られることがあるためです。
    f0=f1=f2=⋯=fn ⇒ f0≡fnf_{0}=f_{1}=f_{2}=\cdots=f_{n}\ \Rightarrow\ f_{0}\equiv f_{n}

全プロセスの詳細解説

  1. sinとcosで表す 3 ステップ

    tan x + cot x ≡ sec x csc xを証明しなさい。

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    1. 左辺をsinとcosで表します。

      tan⁡x+cot⁡x=sin⁡xcos⁡x+cos⁡xsin⁡x\tan x+\cot x=\frac{\sin x}{\cos x}+\frac{\cos x}{\sin x}
    2. 分母をsin x cos xにそろえて足します。

      =sin⁡2x+cos⁡2xsin⁡xcos⁡x=\frac{\sin^{2}x+\cos^{2}x}{\sin x\cos x}
    3. 分子は1になります。逆数の関係を使えば完成です。

      =1sin⁡xcos⁡x=sec⁡xcsc⁡x=\frac{1}{\sin x\cos x}=\sec x\csc x

    解答

    sin xとcos xがともにゼロでない範囲で、tan x + cot x ≡ sec x csc xが成り立ちます。このページの64個すべての角でも一致します。

    tan⁡x+cot⁡x≡sec⁡xcsc⁡x\tan x+\cot x\equiv\sec x\csc x
  2. 平方の差を因数分解する 2 ステップ

    cos⁴x − sin⁴x ≡ cos 2xを証明しなさい。

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    1. cos⁴x − sin⁴xは、cos²xとsin²xの平方の差として因数分解できます。

      cos⁡4x−sin⁡4x=(cos⁡2x−sin⁡2x)(cos⁡2x+sin⁡2x)\cos^{4}x-\sin^{4}x=(\cos^{2}x-\sin^{2}x)(\cos^{2}x+\sin^{2}x)
    2. 後ろの括弧は1。前の括弧には倍角の公式を使います。

      =(cos⁡2x−sin⁡2x)⋅1=cos⁡2x=(\cos^{2}x-\sin^{2}x)\cdot1=\cos2x

    解答

    すべてのxで、cos⁴x − sin⁴x ≡ cos 2xが成り立ちます。

    cos⁡4x−sin⁡4x≡cos⁡2x\cos^{4}x-\sin^{4}x\equiv\cos2x
  3. 和と差を掛けて平方の差を作る 2 ステップ

    (1 + sin x)/cos x ≡ cos x/(1 − sin x)を証明しなさい。

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    1. 分子と分母に1 − sin xを掛け、分子を平方の差にします。

      1+sin⁡xcos⁡x=(1+sin⁡x)(1−sin⁡x)cos⁡x (1−sin⁡x)=1−sin⁡2xcos⁡x (1−sin⁡x)\frac{1+\sin x}{\cos x}=\frac{(1+\sin x)(1-\sin x)}{\cos x\,(1-\sin x)}=\frac{1-\sin^{2}x}{\cos x\,(1-\sin x)}
    2. 1 − sin²x = cos²xを使い、cos xで約分します。

      =cos⁡2xcos⁡x (1−sin⁡x)=cos⁡x1−sin⁡x=\frac{\cos^{2}x}{\cos x\,(1-\sin x)}=\frac{\cos x}{1-\sin x}

    解答

    cos x ≠ 0かつsin x ≠ 1の範囲で、(1 + sin x)/cos x ≡ cos x/(1 − sin x)が成り立ちます。

    1+sin⁡xcos⁡x≡cos⁡x1−sin⁡x\frac{1+\sin x}{\cos x}\equiv\frac{\cos x}{1-\sin x}
  4. 加法定理と倍角の公式を組み合わせる 3 ステップ

    sin 3x ≡ 3 sin x − 4 sin³xを証明しなさい。

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    1. 3x = 2x + xと書き、加法定理で展開します。

      sin⁡3x=sin⁡(2x+x)=sin⁡2xcos⁡x+cos⁡2xsin⁡x\sin3x=\sin(2x+x)=\sin2x\cos x+\cos2x\sin x
    2. 次に倍角の公式を使います。cos 2xには、sinだけで表す形を選びます。

      =2sin⁡xcos⁡2x+(1−2sin⁡2x)sin⁡x=2\sin x\cos^{2}x+(1-2\sin^{2}x)\sin x
    3. cos²xを1 − sin²xに置き換え、同類項をまとめます。

      =2(1−sin⁡2x)sin⁡x+sin⁡x−2sin⁡3x=3sin⁡x−4sin⁡3x=2(1-\sin^{2}x)\sin x+\sin x-2\sin^{3}x=3\sin x-4\sin^{3}x

    解答

    すべてのxで、sin 3x ≡ 3 sin x − 4 sin³xが成り立ちます。

    sin⁡3x≡3sin⁡x−4sin⁡3x\sin3x\equiv3\sin x-4\sin^{3}x
  5. 等式が成り立たない角を見つける 3 ステップ

    √(1 − cos²x) = sin xは恒等式ですか。そうでなければ、成り立たない角を挙げ、等式を正しく直しなさい。

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    1. 最初の式変形は恒等的に成り立ちます。

      1−cos⁡2x=sin⁡2x\sqrt{1-\cos^{2}x}=\sqrt{\sin^{2}x}
    2. 二乗した数に√を付けて得られるのは、元の数の絶対値です。

      sin⁡2x=∣sin⁡x∣\sqrt{\sin^{2}x}=|\sin x|
    3. したがって、sin x < 0となる角では成り立ちません。このページで最初に不一致が見つかる角では、

      x=264.98∘:∣sin⁡x∣=0.9962,sin⁡x=−0.9962x=264{.}98^{\circ}:\quad|\sin x|=0{.}9962,\qquad\sin x=-0{.}9962

    解答

    恒等式ではありません。180° < x < 360°の範囲で成り立ちません。例えば264.98°では、両辺の値は0.9962と−0.9962です。正しい恒等式は√(1 − cos²x) = |sin x|です。

    1−cos⁡2x≡∣sin⁡x∣\sqrt{1-\cos^{2}x}\equiv|\sin x|
  6. 恒等式を証明し、方程式を解く 3 ステップ

    (1 − cos 2x)/sin 2x ≡ tan xを証明し、その結果を使って、0° < x < 360°の範囲で方程式(1 − cos 2x)/sin 2x = √3を解きなさい。

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    1. 1 − cos 2xが単項式になる形の倍角の公式と、sinの倍角の公式を使います。

      1−cos⁡2xsin⁡2x=1−(1−2sin⁡2x)2sin⁡xcos⁡x=2sin⁡2x2sin⁡xcos⁡x=tan⁡x\frac{1-\cos2x}{\sin2x}=\frac{1-(1-2\sin^{2}x)}{2\sin x\cos x}=\frac{2\sin^{2}x}{2\sin x\cos x}=\tan x
    2. 方程式はtan x = √3となります。tanの周期は180°です。

      tan⁡x=3 ⇒ x=60∘,x=60∘+180∘=240∘\tan x=\sqrt{3}\ \Rightarrow\ x=60^{\circ},\quad x=60^{\circ}+180^{\circ}=240^{\circ}
    3. 得られたどちらの角でもsin 2x ≠ 0となり、元の左辺が定義されることを確かめます。

      sin⁡120∘=32≠0,sin⁡480∘=32≠0\sin120^{\circ}=\tfrac{\sqrt{3}}{2}\ne0,\qquad\sin480^{\circ}=\tfrac{\sqrt{3}}{2}\ne0

    解答

    x = 60°またはx = 240°。

    x=60∘, 240∘x=60^{\circ},\ 240^{\circ}
  7. 誤りを見つける 2 ステップ

    ある生徒がcos⁴x − sin⁴x = (cos²x − sin²x)² = cos 2xと書きました。誤りを指摘しなさい。

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    1. 最初の式変形で、平方の差を、差の平方にしてしまっています。

      cos⁡4x−sin⁡4x ≠ (cos⁡2x−sin⁡2x)2\cos^{4}x-\sin^{4}x\ \ne\ (\cos^{2}x-\sin^{2}x)^{2}
    2. このふたつは等しくありません。このページで最初に不一致が見つかる42.49°では、

      x=42.49∘:cos⁡4x−sin⁡4x=0.0874,(cos⁡2x−sin⁡2x)2=0.0076x=42{.}49^{\circ}:\quad\cos^{4}x-\sin^{4}x=0{.}0874,\qquad(\cos^{2}x-\sin^{2}x)^{2}=0{.}0076

    解答

    式変形1が誤っています。正しくはa² − b² = (a − b)(a + b)であり、(a − b)²ではありません。また、(cos²x − sin²x)²はcos²2xです。示したい等式自体は正しいものの、この式変形では証明できていません。

    a2−b2=(a−b)(a+b)≠(a−b)2a^{2}-b^{2}=(a-b)(a+b)\ne(a-b)^{2}

補充問題(答えのみ)

  1. 1/(1 − sin x) + 1/(1 + sin x) ≡ 2 sec²xを証明しなさい。

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    通分すると分母は1 − sin²x = cos²xとなり、分子の和は2になります。

    11−sin⁡x+11+sin⁡x=21−sin⁡2x=2cos⁡2x=2sec⁡2x\frac{1}{1-\sin x}+\frac{1}{1+\sin x}=\frac{2}{1-\sin^{2}x}=\frac{2}{\cos^{2}x}=2\sec^{2}x
  2. (sin x + cos x)² ≡ 1 + sin 2xを証明しなさい。

    答えを表示

    展開すると、sin²x + cos²x + 2 sin x cos x = 1 + sin 2x。

    (sin⁡x+cos⁡x)2=1+2sin⁡xcos⁡x=1+sin⁡2x(\sin x+\cos x)^{2}=1+2\sin x\cos x=1+\sin2x
  3. sec⁴x − tan⁴x ≡ sec²x + tan²xを証明しなさい。

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    (sec²x − tan²x)(sec²x + tan²x)と因数分解し、sec²x − tan²x = 1を使います。

    sec⁡4x−tan⁡4x=(sec⁡2x−tan⁡2x)(sec⁡2x+tan⁡2x)=sec⁡2x+tan⁡2x\sec^{4}x-\tan^{4}x=(\sec^{2}x-\tan^{2}x)(\sec^{2}x+\tan^{2}x)=\sec^{2}x+\tan^{2}x
  4. cot x − tan x ≡ 2 cot 2xを証明しなさい。

    答えを表示

    分母をsin x cos xにそろえると、分子はcos²x − sin²x = cos 2xになります。分母にはsin x cos x = ½ sin 2xを使います。

    cot⁡x−tan⁡x=cos⁡2x12sin⁡2x=2cot⁡2x\cot x-\tan x=\frac{\cos2x}{\tfrac12\sin2x}=2\cot2x
  5. sin x/(1 + cos x) ≡ (1 − cos x)/sin xは成り立ちますか。

    答えを表示

    両辺が定義される範囲で成り立ちます。右辺の分子と分母に1 + cos xを掛けてみましょう。

    1−cos⁡xsin⁡x=1−cos⁡2xsin⁡x (1+cos⁡x)=sin⁡x1+cos⁡x\frac{1-\cos x}{\sin x}=\frac{1-\cos^{2}x}{\sin x\,(1+\cos x)}=\frac{\sin x}{1+\cos x}
  6. cos x = √(1 − sin²x)は恒等式ですか。

    答えを表示

    恒等式ではありません。cos x < 0の範囲では成り立ちません。例えば120°では、左辺は−1/2、右辺は1/2です。

    x=120∘:cos⁡x=−12,1−sin⁡2x=12x=120^{\circ}:\quad\cos x=-\tfrac12,\quad\sqrt{1-\sin^{2}x}=\tfrac12

いくつかの角で一致しても、証明にはならない

√(1 − cos²x) = sin x?を押し、電卓で確かめるときに選びがちな30°、45°、60°、90°、150°を代入してみてください。どの角でも両辺は一致します。それでも、この等式は成り立ちません。このページで最初に不一致が見つかる角は264.98°。左辺は0.9962、右辺は−0.9962です。根号で表す値は負になりませんが、sin xは第三象限と第四象限で負になります。sin xが正となる半周だけを調べていたら、この誤りは見つからなかったでしょう。64個の角を一周にわたって配置しているのは、そのためです。正しくは√(1 − cos²x) = |sin x|です。

両辺を二乗すると、誤った等式でも証明できたように見える

この誤った等式も、元には戻せない操作をすると、正しい等式に変わります。√(1 − cos²x) = sin xの両辺を二乗すると、1 − cos²x = sin²x。これはすべての角で成り立ちます。二乗するとsin xと−sin xの区別がつかなくなるため、二乗を重ねた先で等式が成り立っても、出発点の等式が正しいとはいえません。−1 = 1でさえ、両辺を二乗すれば1 = 1になります。恒等式の証明では、一方の辺からもう一方の辺へと式を変形し、各行を直前の行と等しく保ちます。こうすれば、それぞれの=は同じ値を結んでおり、左辺から右辺まで等号でつながります。

角がxの整数倍なら、十分な個数の角での確認が証明になる

角を代入して調べるだけで証明できる場合もあります。x、2x、…、nxのsinとcosの定数倍を足し合わせた式を、次数nの三角多項式といいます。恒等的にゼロでなければ、一周のうち値がゼロになる角は高々2n個です。単位円上で角xに対応する点をzと表すと、この式はzの2n次多項式をzⁿで割った形になり、その多項式の根は高々2n個だからです。したがって、このような式どうしが一周のうち異なる2n + 1個の角で一致すれば、すべての角で一致します。分数の式も、分母を払えば同じ議論に帰着します。つまり、このページの64個すべての角で一致すれば、丸め誤差を別として、分母を払った後の次数が31以下の等式は成立すると確定できます。根号や絶対値を含む式には、この議論は適用できません。最初の欄で扱った誤った等式は、まさにその例です。

学習の道すじ

三角関数の恒等式と方程式

参考文献 (1)